うちの親のところにも新しい保険証が来た。
医療保険財政が悪化していて何らかの手を打たなければならないのは承知している。
特に治療余地のない老化現象による長期入院者が病院のベットを占めてしまい、真に治療が必要な急病人・けが人が受け入れ不能になるような矛盾は解消しなければならないだろう。
また資力のある老人でも既得権により1割負担の一方で、日々のねぐらすら定まらない非正規雇用の若年労働者は保険料も払えず無保険で病気が悪化するまで放置し手遅れになって死ぬ者もいるという現状からすれば、払える範囲の負担増にも異存はない。
だから制度改正自体に反対する気はない。
だが、医療保険財政が苦しいと言いながら制度改正のために莫大な事務費を使うのは許せない。
制度の看板替えだけのために全ての加入者に新しい保険証を郵送するだけで膨大な印刷費・郵送費がかかっているはずだ。
この看板替えにかかった事務コストは正味の医療費に回らない捨て金である。
後期高齢者医療制度の本質は
1.症状の固定した高齢者の診療報酬定額化
2.高所得高齢者の保険料引き上げ、組合健保被扶養高齢者の扶養扱い除外による負担増
3.保険者を市町村から広域連合に移すことによる財政難小自治体救済
である。
1は単に診療報酬の支払いルールを変えれば出来ることだし、必要なら年齢にかかわらず慢性病全般についてやるべきだった。
2は単に組合健保の扶養適用範囲を変えれば出来ることだ。
3は都道府県による再保険で行えばよく、加入者に関わる窓口まで変える必然性はなかった。
つまり、ただでさえ財政が苦しいのに全く意味のないことに多額の事務費をかけた点で後期高齢者医療制度は最悪だ。
しかも切り替え時の事務処理方法がなっていないため、いたずらに滞納をまねく仕組みになっている。
うちの親はいままできちんと口座振替で保険料を納めてきた。
ところが、制度改正により納付先が変わったから口座振替依頼書を出し直せと言うのだ。
その口座振替依頼書なるものが電気やガスのように記入してポストに投函する方式ならまだよい。
ふざけたことに銀行窓口へ直接出すことしかできない書式なのだ。
うちの親は5分以上の外出が困難な状態だ。
私の職場周辺には銀行窓口が無いし、やたらな用事では休めないから代わりに出してやることは出来ない。
そしてホームヘルパーは介護保険で認められた業務でないから銀行の用事は出来ないという。
食材の買い物は出来て、記入済みの書類を出してくるのは駄目だというのも変な話だがそういう制度らしい。
これでは滞納しろと言っているようなものである。
しかも10月以降は年金から天引きになるから口座振替は関係ないという。
だったら何故最初から天引きにしないのかさっぱり解らない。
どうやら野党が天引きは反対だとか文句を付けたせいらしいが冗談ではない。
払わなければいけないものは天引きだろうが窓口だろうが出る金は同じだ。
そして外出困難者にとって、窓口に行けと言うことは滞納しろと言うことと同じなのだ。
天引きに反対している人は滞納を助長したくてやっているのだろうか。

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本題と関係ないけどうちの親のお薦め本
”言葉を恃む”(竹西寛子 2008年) 


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