地役権って何それ?


 SF”オプションパーツ”27章に登場した「地役権」ってなんだと思いますか?
要するに、自分の土地を利用するために必要な場合に隣接(近接も?)する土地を利用する権利の事らしいです。
借地権、地上権、小作権などは「独占的な」権利です。例えば、人に貸している土地へ勝手に立ち入れば地主でも住居侵入になることがあります(もちろん、地境や埋設物の確認といった正当な財産管理のためならOK)。
地役権はそういう独占的な権利ではなく、オマケ的な権利なのですが軽んじていると酷い目に遭うことがあります。
地役権には色々な種類がありますが、その中で実際にpinksaturnが遭遇したのは通行地役権でした。
土地に関わる権利の中でもマイナーなため、不動産屋でも意味がわからずに失敗することがあるようです。
登記簿謄本の乙区という欄(ローンで買うと抵当権が書かれたりする場所)に記載されるのですが、複雑なため読み違えやすいのです。
何が複雑かというと、要役地(利用させて貰う側の土地)と承役地(利用する側の土地)の両方に記載され、どっちがどっちなのだか語感的にぴんと来ないところでしょう。
 何故、不動産屋も間違えるような複雑な権利に詳しくなったのか?。
当然ですが、ろくでもない体験でした。

 私の生家は、公道に面していない土地に建っていました。
両親が土地を買った時代は今から比べれば東京郊外も土地が安かったけど、まだ電鉄系などの大手がきちんとした造成をして販売する物件は限られた地域の高級住宅地だけで、30歳前後の会社員が買える値段ではなかったのです。
そして、チラシ広告の物件などは大概詐欺まがいの危ないのが多いというのがもっぱらの評判でした。
そのため同僚知人などのツテで、個人売買の売り手を捜すことも多かったようです。
私の両親もそういう風評に従った訳ですが、数人の人を介した紹介では責任の所在も曖昧だし、免許の必要な不動産屋と違って厳格な説明義務も負わないのでかえってリスクが高い場合もあったのです。
そして法律に暗かった両親は見事に地雷を踏んでしまったのでした。
売り主(一見好々爺風)は、元教員、退職金で買った土地が自宅には広すぎるので一部を売るという話だったのですが、実はたちの悪いエロじじいで異性がらみの賠償金のため年金を差し押さえられそうになって追いつめられていたのでした。
最初に、土地を売るときの説明では「ここは道路です。私道負担はこちらでします(これがとんでもない罠)。」という話で公道に通じる幅6mの通路を確保すると言うことになっていました。
ところが、両親に土地を売りつけて2年ほどの内に、かの通路は一部は幅が2m削られて隣接地に売り渡され、さらに残る部分は幅2mに削られてエロ爺の母屋が建ってしまったのでした。
恐らく初めから騙す気だったのでしょう。
建築基準法によれば、「役所(特定行政庁)に認められた」道路に面しない土地に建物を建てることは出来ません。
役所が認める道路とは、原則として公道か位置指定道路と呼ばれる基準を満たした私道だけです。
したがって、この土地を買うときに幅が6mあった”自称私道”を位置指定道路にする手続きを要求し、応じないなら買わないというべきだったのです。
しかし、知識も経験もなく、そういう条件を含めて仲介する正規の業者も付いていない状況で、両親は赤子の手をひねるようにエロ詐欺爺の術中に嵌ったのでした。
さらに悪いことに、最初に家を建てたときだけ建築確認が下りてしまったこともとんでもない罠でした。
位置指定道路がないのに建築確認が下りたのは、建築基準法施行時に既に家が建ち並んでいる道路の特例(42乗2項)の運用ミスによるものでした。
 続く

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おまけ:SF”オプションパーツ”中で矮惑星や小惑星について「地役権譲渡、目的資源採掘」という表現を使いましたが、上記の事件から時間が経っていたため「隣接地の利用権」ということを忘れて使った誤用です。
正しくは「鉱業権」とか「地下使用権」とでもすべきでした。買い手は隣接地を所有していなかったので、地役権はあり得ません。
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